家づくりの知識

2023.07.31

【火災に強い住宅】省令準耐火構造とは?基準や性能を解説!

「木造の家は火災に弱い」という印象はありませんか?しかし実は、木造でも火災に強い家づくりは可能です。

例えば「省令準耐火構造」であればコンクリート造やレンガ造と同レベルの耐火仕様と言われており、認定されると、火災保険料も割安に設定できるなどのメリットもあります。

イシカワでは火災にも強い家づくりを行うため、「省令準耐火構造」が標準仕様となっています。

今回はそんな「省令準耐火構造」について、どのくらい火災に強いのか、また、基準となる条件などを解説します。

火災に強い木造住宅に関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。

耐火構造・準耐火構造・防火構造の違い

注文住宅の種類のイメージ

火災が発生したときの被害を抑えるため、建築基準法及び関係法では、建物の構造や用いるべき材料などが決められています。

基準として用いられる主なものが、次の3つです。

・耐火構造
・準耐火構造
・防火構造

性能で比較すると、「耐火構造>準耐火構造>防火構造」の順になります。一般的に耐火構造とは、準耐火構造と防火構造を兼ねて呼ばれることが多いです。

耐火構造とは

耐火構造とは、壁や床などに一定の耐火性能を備えた構造のことです。

具体的には、建築物内で通常の火災による火熱が発生し、所定の時間が経過しても建物の状態が維持されていれば、耐火構造として認められます。

建築基準法第2条第7号での規定は次のとおりです。

壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
※引用:建築基準法第2条第7号|e-Gov法令検索

ここで言う「耐火性能」とは、以下の建物の主要構造に対し、通常の火災が終了するまでの間、火災による建築物の倒壊や延焼を防止する性能を備えることです。

・壁
・柱
・床
・梁(はり)
・屋根
・階段 など

これらには仕様が定められており、国土交通大臣の認定を受けたものでなければいけません。

建築基準法施行令第107条で規定される耐火性能は、下記のとおりです。

建築物の部分にあっては、当該部分に通常の火災による火熱がそれぞれ次の表に掲げる時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
※引用:建築基準法施行令第107条|e-Gov法令検索

ここで求められる性能は、階数や構造部分の種類で異なります。
一般的に火災が鎮火するまでの間、最長3時間の倒壊を防止する「非損傷性」、最長1時間の火災による熱で類焼しない「遮熱性」が求められる点が特徴です。

耐火構造では、後述する防火構造では問われない「遮炎性」も基準のひとつです。遮炎性とは建物内で火災が発生した際、屋外に火炎を出すほどの損傷を生じない性能を言います。
耐火構造では最長1時間の火炎に耐えることが条件です。

※参照:建築基準法施行令第107条|e-Gov法令検索

近年、技術進歩によって不燃材料を使用した、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)だけでなく、木造(W造)でも耐火構造への適合が可能になりました。

準耐火構造とは

準耐火構造とは、壁や柱、床、その他の建築物の部分の構造が、準耐火性能に適合する建築物の構造のことです。

建築基準法で定められている規定に準じており、階数が低く、延べ床面積が小さい建物が該当します。前述の「耐火構造」よりも、規制が緩和された耐火性能基準となっています。

準耐火性能では、建築物内で通常の火災による火熱が発生しても、所定の時間内は、該当する建物の部分は状態を維持していなければなりません。
ただし、経過後は維持していなくても構わないと定められています。

建築基準法第2条第7号の2で規定される準耐火性能は次の通り。

壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能(通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。第九号の三ロにおいて同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
※引用:建築基準法第2条第7号の2|e-Gov法令検索

ここで言う「準耐火性能」とは、通常の火災による延焼を抑制するために、建築物の部分に必要とされる性能のことです。
建築基準法施行令第107条の2では、この「準耐火性能」に関して、次のように定めています。

建築物の部分にあっては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表に掲げる時間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
※引用:建築基準法施行令第107条の2|e-Gov法令検索

準耐火性能に関する技術的な基準では、火災に対して一般的な建築物は最長45分、建築物の規模や用途によって最長60分、倒壊や延焼、変形、溶融せずに耐えることが求められます。さらに、開口部には防火戸などの防火設備が必須です。

※参照:建築基準法施行令第107条|e-Gov法令検索

準耐火構造では、火災中の「延焼を抑制」する性能が求められます。耐火構造のように火災を防止し、鎮火後に建物を再利用できる性能までは要求されていません。

この準耐火構造に準ずる防火性能を持つのが、のちに紹介する「省令準耐火構造」です。こちらの基準は住宅金融支援機構が定めています。
また、建築基準法ではなく、財務省および国交省所轄の省令として設定されています。

防火構造とは

防火構造とは、火事が燃え広がらないよう「もらい火」をしない構造のことです。

他所から出た火災による火熱を建築物が被っても、30分以内は建築物の状態を維持できることが、防火構造の基準です。

建築基準法第2条第8号の規定は次の通りです。

建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しっくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
※引用:建築基準法第2条第8号|e-Gov法令検索

ここで言う防火性能とは、建築基準法施行令第108条で定められる、次のようなものを指します。

耐力壁である外壁にあっては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
※引用:建築基準法施行令第108条|e-Gov法令検索

具体的な条件は次の通りです。

・防火構造試験の認定を受けていること
・軒裏や外壁などが漆喰壁やモルタル、ロックウールなど定めた構造方法を用いるもの
・火災になっても、30分以上は建物が崩壊するような変形、溶融、破壊その他の損傷を生じない

このように防火構造の建築物は、指定された素材や構造方法を用いることで、周辺の建築物が火災で燃えた際にも、30分以内は構造が耐えて建築物を維持できることが条件となっています。

防火地域・準防火地域

土地探し

家を建てる地域によっては火事の延焼を防ぐため、建てる家の耐火構造などが法律で指定されていることがあります。

そういった地域は防火地域・準防火地域として、都市計画法で「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」として定められています。

具体的には、建築基準法および同法施行令において、下表のような規制がかかっています。

※参照:建築基準法|法令検索e-Gov

このように、防火地域や準防火地域に家を建てる際には、一定以上の耐火性能が必要になります。これから家づくりを行う場合は、建築予定地や希望エリアが防火地域・準防火地域に該当しているか確認するようにしてください。

省令準耐火構造とは

注文住宅の後悔事例

「省令準耐火構造」とは、フラット35をはじめとした住宅ローンを提供する「独立行政法人 住宅金融支援機構」が独自に定める基準を満たした構造のことです。

耐火構造・準耐火構造・防火構造とは異なり、建築基準法で定められたものではなく、財務省と国交省所轄の省令として設定されています。

一般的に省令準耐火構造は、建築基準法の準耐火構造と同等の耐火性能を有する構造です。
省令準耐火構造の住宅の主な特徴は次の4つです。

・類焼防止
・各室防火
・延焼遅延
・建築物の構造

以下で、それぞれの概要を詳しくみていきましょう。

類焼防止

1つ目の特徴は、隣家からのもらい火による火災に備える、「類焼防止」です。屋根や軒裏を防火性の高い構造にします。

具体的には、以下のような構造です。

・外壁や軒裏を防火構造(30分耐火)にする
・屋根に瓦やスレートなどの不燃材を使う

屋根を不燃材料で造り、葺いたもの、または準耐火構造であることが、省令準耐火構造の特徴です。

各室防火

2つ目の特徴は火災が発生しても、一定時間部屋から火を出さない「各室防火」です。

火災を最小限に食い止めるには、発生した部屋と隣室および上階居室を区切る「防火区画」が必要です。
省令準耐火構造では、それぞれの部屋を区切っているため、火が他の部屋に燃え広がりにくくなっています。

具体的には、以下のような構造です。

・室内の天井や壁に火に強い石膏ボードを使う
・防火皮膜を施し、指定の性能(15分耐火)をもつ

このように、外壁や軒裏が防火構造であることが省令準耐火構造の特徴です。

延焼遅延

3つ目の特徴は、建物内部での延焼をできるだけ遅らせる「延焼遅延」です。内部で火災が生じると、壁も内側や天井裏を伝って火は燃え広がります。

このような他室への延焼を遅らせるために、火災の通り道となる壁や天井内部の要所(壁と天井の取り合い部分)などに次の材料を用います。

・木材
・断熱材のファイヤーストップ材

省令準耐火構造の建物はこのような延焼遅延に効果的な材料を設けることで、火が住宅すべてに燃え広がるのを防ぎます。

建築物の構造

4つ目の特徴は、防火上支障のない「建物の構造」です。木造住宅は、住宅金融支援機構が定めた以下の工法のどれかに適合していることが条件となっています。

・木造軸組工法または枠組壁工法(2×4)住宅
・プレハブ住宅
・住宅金融支援機構の承認を取得した住宅または工法

▲イシカワの省令準耐火構造について


イシカワの住宅は、標準仕様で省令準耐火構造となっています。
具体的には以下のような耐火性能を有しています。

・隣家からのもらい火による火災に備えた「外部からの延焼防止」
・火が他室へ燃え広がりにくい防火区画などの「各種防火」
・火が住宅全体に広がりにくい「他室への延焼遅延」


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省令準耐火構造のメリット

省令準耐火構造の特徴が理解できたところで、次はそのメリットについてです。省令準耐火構造は主に、次の2つのメリットがあります。

・一般的な木造住宅より火に強い
・火災保険料が安くなる(通常の半分くらいになる場合がある)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

一般的な木造住宅より火に強い

何度もお伝えしている通り、省令準耐火構造の住宅は一般的な木造住宅より、火災に強いというメリットがあります。

万が一火災が起きても、家の倒壊や炎症を一定時間防ぐため、その間に初期消火活動や避難も可能。火災の被害を最小限に抑えられます。

延焼も抑えられるので、自分の被害だけでなく近所の被害も最小限にできるでしょう。
省令準耐火構造はこのように、命と財産を守れる点がメリットです。

火災保険料が安くなる

同じ木造住宅でも、「省令準耐火構造」に適合した住宅は火に強いため、火災保険も大きな割引が設定されています。

建物の構造によって火災の被害には差があるため、火災保険の保険料は構造ごとに料率が異なっています。主に以下の3種類に区分されます。

省令準耐火構造は、この火災保険の構造級別の中の「T構造」に含まれます。これは、コンクリート造・コンクリートブロック造などと同じ構造区分です。また、T構造には準耐火構造や耐火構造の住宅も含まれます。

一般の木造住宅は「H構造」ですが、「T構造」の方がこの「H構造」より保険料が割引になります。
木造住宅の工法を選ぶ際には、この点も踏まえてご検討ください。

省令準耐火構造のデメリット

省令準耐火構造には、メリットだけでなく当然ながらデメリットもあります。
以下のデメリットを理解したうえで、最適な工法をお選びください。

・建築コストがかかる
・デザインの自由度が下がる

それぞれ見ていきましょう。

建築コストがかかる

省令準耐火構造の建物は、不燃性の材料や耐火構造を採用するため、一般的な木造住宅よりも建築コストが高くなる点がデメリットです。

省令準耐火構造に適合させるには、様々な要件を満たさなければなりません。通常よりも割高な建材を使う可能性や、設備の設置費など、条件を満たすのに必要なコストが発生します。

したがって、通常の住宅に必要な費用に加えて、これらのコストが発生するのは大きなデメリットです。ただし、省令準耐火構造は準耐火構造より基準は高くなく、メリットの方が多い構造と言えます。

デザインの自由度が下がる

省令準耐火構造には素材に関する取り決めがあります。したがって、場合によっては家づくりで叶えたいことと、省令準耐火構造の基準を両立させられない可能性に注意が必要です。

例えば、省令準耐火構造では延焼の可能性があるところを不燃材で覆います。基本的には床以外の木材を不燃材である石膏ボードで被覆することになるため、デザインの自由度が下がる可能性があります。

その他、建材や設備の関係から、次のデザインにも制限が発生する可能性があります。

・外壁
・屋根
・間取り
・ドア
・窓のサイズ

家の外観にこだわりがある方は、ハウスメーカーの担当者にまず相談してみましょう。
施工実績やノウハウが豊富な業者に依頼すれば、お客様の希望に沿った提案ができる可能性も高くなるのでおすすめです。

このように省令準耐火構造の家を建てる際には、建築コストやデザインへの制限など、デメリットも理解したうえで、納得のいく住まいづくりを実現しましょう

まとめ:木造住宅でも火災に強い家づくりはできる

「木造住宅は火災に弱い」という印象を抱いている人は多いでしょう。しかし木造住宅でも「省令準耐火構造」に適合した住宅なら、火災に強い家づくりが実現できます

火災に強い家づくりができると、大切な命や財産を守れるのはもちろん、火災保険料ダウンといったメリットもあります。
一般的な木造住宅より初期の建築コストはかかりますが、長期的な視点ではメリットが勝る工法です。

これから新しく家を建てる際、火災対策について考えるなら、「省令準耐火構造」がかなうハウスメーカーを選択肢に入れて検討してみませんか。

イシカワの家は、標準仕様で「省令準耐火構造」を取り入れているため、「外部からの延焼防止」や「各種防火」、「他室への延焼遅延」などの耐火性能を有した住宅です。

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この記事の担当:
イシカワ家づくり編集部

断熱や耐震など、最新の家づくりに役立つ知識をお届けします。みなさまの家づくりの参考にぜひご覧ください。