家づくりの知識

2023.04.28

【暑さ対策】屋根断熱のメリット・デメリットと注意点をご紹介!

屋根断熱の注文住宅

昨今では、高断熱・高気密の住宅が多くなっていますが、屋根の断熱についてはご存じでしょうか。断熱は、壁だけではなく、屋根の構造も考えなければいけません。

建物の上部の断熱については主に屋根断熱と天井断熱の2種類の施工方法があります。
一般的に、天井断熱よりも屋根断熱の方が施工コストや光熱費がかかるといわれていますが、小屋裏の空間も有効に活用したい人にはおすすめです。

本記事では、屋根断熱の仕組みやメリット・デメリット、施工方法について解説いたします。

屋根断熱とは

屋根断熱の断熱材と施工

屋根断熱とは、文字通り、屋根部分で断熱を行い、家全体の断熱性を高める方法です。
屋根から逃げる熱は30%にも達すると言われており、屋根断熱は、家全体の断熱性を高めるためには行っておいた方が良いでしょう。

屋根断熱には、大きく分けて充填断熱外張り断熱があります。
各々の違いは、以下のとおりです。

充填断熱…発泡プラスチック(パイナルフォーム・スタイロフォームなど)・繊維系(グラスウール・セルロースファイバーなど)を使用
外張り断熱…発泡プラスチック系のEPS材やXPS材などの断熱材を使用

素材の特徴によっても断熱性などは異なるので、事前に素材についても施工会社と相談しておきましょう。
また、屋根断熱と似たもので、天井断熱という工法がありますが、天井断熱屋根断熱は別物です。
天井断熱は、文字通り、天井部分に断熱をする方法となっており、天井部分の真上に断熱材が入ります。
一方で、屋根断熱は、屋根裏に断熱を行う工法です。

従来は天井断熱が主な方法でしたが、最近では屋根断熱も増えている傾向です。
以下では、屋根断熱の仕組みや種類について、具体的に解説します。

屋根断熱の仕組み

一般的に、住宅の高い位置は高温になりやすいです。
夏場にロフトや屋根裏部屋が蒸したような状態になった経験はないでしょうか。
これは、屋根部分の断熱が行われていないために、高温状態になってしまうからです。
では、なぜ屋根断熱ではこのような状況にならないのかというと、屋根断熱の場合は、屋根通気が行われるからです。
屋根通気とは、屋根断熱を施す際に、断熱材の外側に空気の通り道を設けて、空気を通すことを指します。
通気層により、熱や湿気を逃すので、蒸したような高温状態になりません。

住宅上部の断熱方法

先述したように、断熱にはいくつかの種類があり、ここでは住宅上部の主な断熱方法として、屋根断熱と天井断熱について解説します。

屋根断熱

屋根断熱の内側

屋根断熱にもいくつか種類があり、1つ目は屋根の室内側に断熱材を取り付ける内断熱、2つ目は屋外側に断熱材を取り付ける外断熱、3つ目は内断熱と外断熱を併用した内側充填・外張付加断熱があります。

内側充填・外張付加断熱は特に、正しい施工が不可欠です。

施工精度が低いと、内部結露や雨漏り、外壁のズレ、耐震性の劣化などさまざまな問題を引き起こします。例えば、後々に雨漏りと間違えるほどの大量の結露が中で発生したり、葺き替え時や事前の調査で、木材の腐敗や防水ができていないことが判明することもあります。この問題の原因は多くの場合、断熱・防湿の設計や施工不備などが考えられます。被害が大きくなる前に対策が必要なので、発見したらすぐに補修することが必須です。

断熱の目的や、かけられる予算などで、それぞれの断熱方法がどんな方向けか判断することができます。ちなみに、DIYで改修を行う場合は外断熱を利用する場合が多いようです。

天井断熱

天井断熱の画像

天井断熱は天井に断熱材を取り付ける断熱工法で、断熱材の厚さに制限がなく(壁の場合は壁厚が上限)、断熱効果が高い特徴があります。
さらに、断熱材を取り付ける範囲が狭いので、屋根断熱と比べて工事費用が安いです。
しかし、屋根断熱のように屋根裏への断熱効果は期待できません。

そのほか、屋根断熱、天井断熱の他に、塗装断熱という方法もあります。
塗装断熱は、断熱効果のある塗料で屋根塗装を行う方法です。

日本で有名な塗装断熱の製品、「ロハスコート」は屋根や外壁の塗り替えに用いられる塗料です。屋根にこの塗装をすると、室内の温度上昇を抑えることができ、冷暖房効率アップに役立ちます。屋根を紫外線から守ることもできるため、建物の劣化防止にも有効です。

しかし塗装断熱は屋根の補修と合わせて断熱効果を高める場合に行われるのが一般的であり、塗装単体ではそれほど大きな効果は期待できません。

次に、屋根断熱に使われる断熱材の種類についても知っておきましょう。
主に使用される断熱材の種類4つの特徴を、以下の表にまとめました。

断熱材の種類によって、屋根断熱施工の費用も異なるので、事前に施工会社と相談してから決めましょう。
また、断熱材の厚みに関しては、国が定めた「次世代省エネルギー基準」の制度によって基準が明確化されており、地域によって断熱材の種類が指定されています。

屋根と輻射熱対策

屋根裏が高温状態になってしまうのは、輻射熱の影響があります。
輻射熱とは遠赤外線などの熱線によって伝わる熱です。
熱線が何か物体に当たった際に熱が発生します。

例えば、太陽熱で部屋の家具が温かくなり、それによって部屋全体が高温になってしまうのは、輻射熱によるものです。この輻射熱は、屋根裏にも影響します。

屋根断熱の対応を行っていない場合、屋根が太陽熱によって温められ、その熱が部屋におりてきてしまうので、2階部分や屋根裏部分などが高温になります。
しかし、屋根裏断熱の場合は、屋根との間に空気層があるため、輻射熱で温められるのは、空気層にある空気だけです。
そのため、輻射熱によって住まい全体が高温になってしまう心配はほとんどありません。

輻射熱対策のアルミ遮熱シート

また、輻射熱対策として、アルミを使用するケースもあります。
アルミは電磁波の反射率が高いため、簡単に輻射熱を防いでくれるのです。
宇宙服などでも活用されており、宇宙の100℃から-180℃という厳しい環境でも活動できるのはアルミ遮熱シートのおかげなのです。

イシカワではアルミ遮熱材「R-FOIL」を屋根部分に使用しています。
「R-FOIL」は、純度の高いアルミ遮熱材なので、反射率が高くなっています。

輻射熱対策を行うと、夏場は断熱材の温度上昇を防ぎ、冬場は暖房熱損失を防ぐので、断熱材と合わせて導入を検討してみてください。

屋根断熱の効果

屋根断熱による省エネ

屋根断熱の効果は、多岐にわたります。
単純に断熱性が高いだけではなく、省エネ効果にもつながるでしょう。
以下で、効果と合わせてメリットを紹介するので、参考にしてください。
また、デメリットについても解説します。

屋根断熱によるメリット

屋根断熱によるメリットは、以下の5つです。

●屋根裏の有効活用
●エネルギー効率の向上
●快適な室内環境の維持
●建物の耐久性の向上
●環境保護

上記のように快適に暮らせるだけでなく、耐久性の向上や環境保護の役割もあります。
以下で、なぜそれぞれのメリットが生じるのかについて解説するので、屋根断熱を検討する際の参考にしてください。

屋根裏の有効活用

屋根裏の有効活用

屋根断熱の最大のメリットは屋根裏の有効活用です。
屋根断熱を行っていない場合、屋根裏は高温状態になってしまいます。
しかし、屋根断熱を行えば、夏場でも温かい空気が溜まってしまうことを防げるのです。
そのため、これまでデッドスペースとなっていた屋根裏を、通常の部屋と同じように使えます。
また、昨今の住宅で多くみられるロフトや吹き抜け、開放感など、室内を有効活用する際に、屋根断熱は適しています。

エネルギー効率の向上

屋根断熱を行えば、冬は暖房費の節約、夏は冷房費の節約になります。
理由は、屋根断熱を行うと住宅からの熱を遮断できるからです。
建物全体のエネルギー効率が向上するため、省エネ性の高い建物になるでしょう。
また、家全体が快適な温度を保てるので、過ごしやすい環境になります。

快適な室内環境の維持

屋根断熱は、ご家族の健康にも影響します。
屋根断熱によって、冷気や熱を遮断することで、室内の温度や湿度を一定に保てるからです。
室内の温度が急激に変化してしまうと、健康を害する可能性がありますが、常に室内の温度や湿度が一定であれば、快適な環境になります。
小さなお子様や高齢の方と暮らすご家庭でも、安心して過ごせるでしょう。

建物の耐久性の向上

屋根断熱は、建物の耐久性を高める方法としても有効的です。
屋根断熱を行うと、断熱はもちろん、湿気や水分も防止してくれます。
そのため、建物の損傷や腐食を防げるのです。
また、屋根断熱材を設置することで、屋根の構造体を温度差から保護できます

環境保護

直接的なメリットではありませんが、屋根断熱を行えば、環境へ与える負担も軽減できます。
家の断熱性が高まり、エネルギー効率が向上すれば、それだけ冷暖房を使う頻度が少なくなるためです。
また、断熱材には再生可能な素材もあるので、環境に配慮した建物設計ができます。

屋根断熱によるデメリット

屋根裏断熱はメリットもありますが、同時にデメリットもあります。
主なデメリットは、以下の3つです。

●冷暖房の光熱費がかかる可能性
●工事費が高くなる
●断熱材による屋根の重さの増加

さらに、以下2つの注意点についても知っておきましょう。

●断熱材の厚さ制限
●屋根の形状による制限

以下で、それぞれのデメリットと注意点を合わせて、解説します。

冷暖房の光熱費がかかる可能性

屋根断熱を行うことで、冷暖房の効率が高くなると解説しましたが、反対に冷暖房の費用がかかってしまうケースもあります。
なぜなら、これまでデッドスペースとして使用していなかった屋根裏の空間を、居住スペースとして使うからです。
つまり、冷暖房を使用する部屋が1つ増えるので、その分の冷暖房費がかかってしまいます。
しかし、冷暖房の光熱費は「断熱材・施工・空気の循環」をしっかり行っておけば改善可能です。
また、ロフトや勾配天井にシーリングファンやプロペラなどを設置しておけば、効率良く室内全体の空気を循環させられます。

工事費が高くなる

屋根断熱は、天井断熱と比べて面積が広いため、工事費が高くなります。
工事費が高くなるのは、断熱材が多く必要になったり、施工に手間がかかるからです。
屋根の面積によって異なりますが、屋根断熱の工事にかかる費用は、10~70万円程です。

断熱材による違いは、以下のとおりです。

上記のように、断熱材によって多少の違いはあるものの、費用面で大きな差はありません。
基本的には施工費用としてかかる部分が大きいので、屋根断熱を行う際は、予算を考慮した上で検討してください。

断熱材による屋根の重さ増加

屋根断熱に使用する素材によっては、屋根の重さが増加する可能性があります。
もちろん、屋根断熱によって屋根が崩れやすくなるようなケースはありません。
しかし、屋根の構造によっては、断熱材の重みを支えるために、補強工事が必要になる場合があります。

断熱材の厚さ制限

屋根断熱の断熱材には、厚さ制限があります。
天井断熱の場合、天井の上に敷く断熱材の厚さ制限はありませんが、屋根断熱の場合は、限度があるのです。
充填断熱の場合は、屋根の厚さが限度となっており、外張り断熱であれば10cm程度が断熱材の厚さの限度となります。

屋根の形状による制限

屋根断熱は、屋根の形状によって制限される場合があります。
特に、屋根の勾配が緩やかな場合には、断熱材を設置する場所が限られてしまい、効果的な断熱効果が得られない場合があるのです。
屋根の形状については、施工会社と事前に相談しておきましょう。

屋根断熱の施工方法と注意点

屋根断熱の施工方法

屋根断熱の施工方法は、いくつかあります。
基本的な流れは、以下のとおりです。

1.空気の通り道である通気層が狭くならないように、スペーサーを設置。
2.屋根を支える垂木部分に、断熱材を打つ
3.隙間部分をテープで埋める

さらに、以下で2種類の断熱方法や、施工時の注意点について解説します。

屋根断熱の施工方法

屋根断熱の施工方法は、主に以下の2種類あります。

●1層外張り
●2層外張り

それぞれの施工方法について解説します。

まず、1層外張りの施工の流れは、以下のとおりです。

1.板状気密材を施行し、継目を気密テープで目張り。
2.壁の板状気密材が施行されていない場合は、屋根外周部に幅200mm以上の住宅用防湿フィルムを壁に100mm以上垂らす形で先張
3.断熱材を板状気密材上面に隙間が生じないように釘で仮留め
4.断熱材の上面に、通気たる木を施行
5.通気たる木の上面に、野地板を施行

垂木が断熱材を貫通する場合は、以下のような工夫を行います。

●壁の断熱材の天端は、たる木部分を欠きこんで施工
●垂木及び野地板と壁断熱材の取り合い部は現場発泡ウレタンフォーム等で措置
●室内側についても同様の措置をして気密性を確保

次に、2層外張りの施工の流れです。

●板状気密材の施工、目地及び外周の気密措置までは屋根外張断熱と同様
●断熱材と同厚みの下地垂木を桁行方向に施工し、その間に断熱材を施行
●断熱厚み+30mm程度の通気垂木を梁間方向に施工し、その間に断熱材を施行

さらに、桁上断熱を行います。
桁上断熱の施工の流れは、以下のとおりです。

1.適宣受材を設置
2.小屋梁の上面に板状気密材を施行し、継ぎ目を気密テープで目張りするか、住宅用防湿気密フィルムを連続施工
3.小屋束との取り合いは気密テープで措置
4.妻壁が有る場合は、妻壁に断熱材を施行
5.小屋裏の防露・排熱のため、小屋裏換気口を設ける

以上が屋根断熱の施工の流れです。

家の形状や施工会社によって多少の違いがあるので、事前に作業の流れについて確認しておきましょう。

施工時の注意点

屋根断熱施工時の注意点としては、以下の3つがあります。

●通気性の確保
●結露
●信頼できる業者を選ぶ

まず、屋根断熱において、通気性の確保は最も重要です。
通気層はただ空けていても意味がなく、空気を流して初めて通気層の意味があります。
そのためには、通気層の出入り口を適切に設けなければいけません。
また、換気材を取り付けるだけではなく、すべての通気層に空気を流す工夫も必要です。
この通気性の確保は、結露対策にもつながります。
適切に空気が流れていないと、内外気温の差が生じて、構造部分に結露が発生してしまい、腐食する可能性があるのです。

屋根断熱では棟換気を行うようにし、空気の入口(給気)と出口(排気)は必ず確保しましょう。その際には、屋根の形状に応じて、空気が効率よく流れる仕組みを作ることがポイントです。

屋根断熱の施工経験が豊富な業者であれば、屋根通気を適切に行ってくれるので、業者選びも慎重に行いましょう。

そのため、業者を選ぶ際には、ただ「安い」「高い」だけで選ぶのではなく、適切な知識を持っていて、実績豊富であるかをチェックしてください。

まとめ

屋根裏の活用

屋根断熱は、快適な居住空間を増やすためにおすすめの方法です。
屋根裏まで有効活用できれば、部屋数を増やし、ご家族のプライベート空間を充実させられます。

しかし、屋根断熱は、従来の天井断熱と比べて、費用がかかります。
施工費や光熱費を抑えたい方には天井断熱がおすすめです。

天井断熱と屋根断熱の違いは次回の記事にてご説明いたします。

イシカワでは、屋根断熱よりもコストと光熱費が抑えられる天井断熱を標準仕様としています。
また、断熱性を高めて光熱費を抑えられるように、屋根部分にはアルミ遮熱材「R-FOIL」も使用しています。

イシカワの断熱の仕組みの詳細は展示場でご説明いたしますので、ご興味のある方はお近くのモデルハウスにぜひお気軽にご来場ください。

イシカワの展示場予約はこちら>

この記事の担当:
イシカワ家づくり編集部

断熱や耐震など、最新の家づくりに役立つ知識をお届けします。みなさまの家づくりの参考にぜひご覧ください。