家づくりの知識

2023.09.05

天井断熱のメリットとは?屋根断熱との違いや施工方法について解説

住宅の上部で行う断熱方法として、「天井断熱」と「屋根断熱」があります。それぞれメリット・注意点があるため、特性を理解したうえでの導入が重要です。

そこで本記事では、一般的によく使われる天井断熱にはどのような特徴があるのか、「屋根断熱」との違いやメリット、注意点を実際の事例を交えてご紹介します。

最後までお読みいただくと、屋根断熱との違いや施工方法などもご理解いただけますので、ぜひご参考になさってください。

【この記事のポイント】
天井断熱は特に、コストや施工性、冷暖房効率の面で屋根断熱よりも優れています
屋根断熱に比べると、冷暖房する空間が小さくなるため、冷暖房コストを節約できる点がメリットです。
また、天井は屋根より断熱面積が小さい分、断熱材の使用が少なくてすむため、施工コストも抑えられます。
一般的には天井断熱が採用されることが多く、屋根断熱は屋根裏を部屋や収納スペースなどとして活用したい場合に有効です。

天井断熱とは

天井断熱とは、天井部分に断熱材を設置する断熱方法の一つです。天井に断熱材を配置したり貼ったりして断熱を行います。

天井断熱は新築物件だけでなく、既にある住宅をリフォームし、断熱性能を向上させる際にも適している施工方法です。

古い家は多くの場合、天井に断熱材が入っていないため、DIYで断熱材を中に敷きこんで自分でリフォームする方もいらっしゃいます。ただ、使用する断熱材によって難易度が異なるため、どの断熱材を使うべきかは専門家への事前の確認が必要です。

断熱方法については日々進化しており、最新技術を取り入れた質の高い材料や施工方法を用いる住宅業者もあります。
これから注文住宅で新しく家づくりを進める場合は、天井断熱についても知識や技術が豊富な住宅業者への相談をおすすめします。

天井断熱の仕組み

天井断熱は床下の冷気(外気)が壁内を通って入り込んだり、室内の暖気が壁内を通って逃げたりしないよう、間仕切り上部には必ず気流止めを施工する仕組みが特徴的です。

気密性を高め、天井に適切な断熱を施すことで、室内の熱の出入りを制御します。

また断熱材を天井に敷き込む際には、クロスや石膏ボードの後ろに気密を確保し、天井にある野縁受け(野縁を支える細長い下地材)と平行な方向に天井裏もしくは天井の下側から断熱材を施工します。

断熱材を施工する際には、吊り木(天井などを吊る為に用いる建材)の部分に切れ目を入れるなどして、隙間が生じないようにする点もポイントです。

ただし、配管や配線を通す際には断熱気密層の貫通が必要になるため、専用部材や気密パッキン、気密テープを使用して連続性を保つ処理が必要です。

以上のような屋根と屋根裏の熱的な遮断の仕組みによって、エネルギーの浪費が軽減します。

屋根断熱との違い

天井断熱とよく比較検討される断熱方法の一つとして、「屋根断熱」があります。

屋根断熱とは文字通り、屋根で断熱をする断熱方法です。屋根は家の面積の多くを占めるため、屋根の断熱性を高めることは家全体の断熱性を高めることにつながります。

対して、天井断熱は先述の通り、天井のすぐ上に断熱材をおく工法です。

天井断熱と屋根断熱には以下の通り、さまざまな点で異なります。

・施工方法
・施工のしやすさ
・施工コスト
・使用する断熱材
・冷暖房効率

両者の断熱方法の違いを理解することが、快適な住まいづくりにつながります。以下でそれぞれの相違点を詳しく解説しますので、ぜひご確認ください。

施工方法の違い

天井断熱は主に、天井材の上に断熱材を敷き詰める施工方法です。屋根よりも天井の方が断熱する面積が小さく、簡単な施工になるので、コストを抑えられます。

一方で屋根断熱は屋根に断熱を施す施工方法です。さらに屋根断熱には、「充填断熱」と「外張り断熱」の2つの方法があります。

充填断熱はグラスウールやロックウール、セルローズファイバーなどの断熱材を垂木の間に詰め込んだり、屋根裏面に発泡ウレタンを吹き付けたりして断熱する方法です。

また、外張り断熱は野地板(屋根材の下地材)の上にポリスチレンフォームを隙間なく敷き込み、その上に垂木を打って屋根材との間に通気層を作ります。

施工のしやすさの違い

天井断熱の方が屋根断熱よりも施工の手間が少ない分、施工しやすい傾向にあります。

天井断熱はセルロースファイバーを吹き込んだり、グラスウールやロックウールなどを置いたりして断熱を施します。この施工は比較的簡単で、シートを貼る場合もそれほど手間がかかりません。

一方、屋根断熱では天井断熱と比べると、いくつかの工程が必要になります。例えば屋根の内側で充填断熱を行う場合は、屋根の通気性を確保するために下地を組むなど躯体部分に手間がかかります。特に屋根の三角部分の設計や施工は複雑です。

このように、天井断熱と屋根断熱は、施工の手間と難易度に違いがあります。
屋根断熱は特に内側で充填断熱を行う場合に手間がかかるため、天井断熱の方が施工が簡単です。

施工コストの違い

施工コストについても、天井断熱の方が屋根断熱よりも安く抑えられます

これは、天井断熱は面積的にコンパクトであるため、施工コストが抑えられるからです。対照的に屋根断熱は勾配天井(斜めに傾斜した天井)により面積が増えるため、施工コストが高くなります。

コストの違いには、施工の工数や難易度も関係しています。勾配天井の場合は下地を作る必要があるため、複雑で手間がかかります。

また、屋根断熱の中でも外張り断熱は、ネオマフォームやフェノールフォームなどの高性能な素材は単価が高いため、材料費の増加もコストに影響しています。

使用する断熱材の違い

天井断熱で使用される断熱材は、グラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどのような繊維系の断熱材を用いることが多いです。

一方で屋根断熱は、外張り断熱の場合、押し出し法ポリスチレンフォームをはじめとしたプラスチック系の断熱材を用いることが多いです。また充填断熱の場合では天井断熱と同じく、セルロースファイバーやグラスウール、ロックウールといった繊維系断熱材がよく用いられる点が特徴的です。

イシカワでは、通常の施工の場合は天井断熱を採用しています。さらに天井断熱で用いられる断熱材にプラスして、アルミ遮熱材「R-FOIL」を屋根部分に使用しています。
「R-FOIL」は、純度の高いアルミ遮熱材なので、日射熱の反射率が高くなる点が特徴的です。

このような輻射熱対策を行うと、夏場は断熱材の温度上昇を防ぎ、冬場は暖房の熱損失を防げます。断熱材と合わせてぜひ輻射熱対策についてもご検討ください。

冷暖房効率の違い

空間が限られている天井断熱の方が冷暖房効率のコストパフォーマンスが高くなります。その理由は屋根断熱と天井断熱の「空間特性の違い」が関係します。

屋根断熱は、屋根裏スペースも部屋として活用するため、天井断熱よりも広い空間を冷暖房する必要があります。
そのため、冷暖房によるエネルギー負荷が増えるのです。

一方、天井断熱は断熱材を敷く面積が天井までの領域に限られるため、屋根断熱と比較すると容積が少なくなり冷暖房効率が上がります。

屋根裏の空間を活用する必要がないのであれば、冷暖房効率が高い天井断熱をおすすめします

天井断熱のメリット

天井断熱には様々なメリットがありますが、代表的なメリットは次の3つです。

・使用する断熱材の厚さに制限がない
・空調や冷暖房のランニングコストを抑えられる
・施工コストを抑えられる

それぞれについて、以下でさらに詳しくみていきましょう。

使用する断熱材の厚さに制限がない

屋根断熱の場合は、使用する断熱材の厚さに限度があります。特に充填断熱の場合は、屋根の厚さが限度となっており、外張り断熱の場合も10cm程度が限度です。

しかし、天井断熱は屋根断熱とは違って、断熱材の厚さに制限がありません
暑さや寒さから建物を保護したい場合、断熱材を必要なだけ厚くすることで断熱性能を向上させることが可能です。柔軟な施工ができる分、より高い断熱性能が実現できる点がメリットと言えます。

空調や冷暖房のランニングコストを抑えられる

天井断熱は屋根断熱と比べると、冷暖房する必要がある空間が小さくなるため、冷暖房費を節約し、省エネに貢献できる点がメリットです。

屋根断熱の場合は、屋根裏空間も部屋として使用するため、冷暖房の対象となりますが、天井断熱では天井から下の部分だけで済みます。

ただし施工が適切に行われないと、断熱材に隙間や厚みのばらつきが発生し、断熱不足や結露が生じる可能性があります。断熱が不適切だと冷暖房効果が低下し、逆にエネルギー消費が増えかねません。

施工コストを抑えられる

施工する面積が小さいため断熱材の使用量が少ないうえ、グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材を使用することで材料費を安価に抑えられます。また施工も比較的簡単であるため、施工費も削減できます

天井断熱の注意点

天井断熱には当然ながら、メリットだけでなく注意点もあります。主な注意点は以下の通りです。

・屋根裏空間の利用が難しい
・小屋裏の換気が必須
・丁寧な施工が必要

天井断熱を採用した後に後悔しないためにも、以下の注意点をぜひご確認ください。

屋根裏空間の利用が難しい

天井断熱では天井に断熱材を使用するため、屋根裏空間を活用した柔軟なデザインや利用がしにくい点がデメリットです。

例えば天井断熱では、天井部分が断熱材で覆われるため、屋根裏を部屋や収納スペースとして活用することが難しくなります。また、勾配天井の実現も不可能です。
また同じ理由で、2階にリビングをつくる場合、吹き抜け天井を作ることは基本的にはできません。

屋根裏空間を部屋や収納スペースとして活用したい場合や、小屋裏空間を使ったデザインを希望する場合は、天井断熱以外での施工の検討が必要です。

断熱方法のタイプによって、空間の活用できる範囲が違う点を理解しておきましょう。

小屋裏の換気が必須

結露は住宅の劣化に繋がる可能性があるため、天井断熱に限らず注意が必要です。結露を防ぐためには、まず換気を徹底しなければなりません。

天井断熱においては特に、「小屋裏換気」がポイントです。小屋裏は屋根と天井の間の空間で、換気には外気を取り入れることが求められます。

特に夏場には小屋裏の温度が高くなり、夜に冷えることで結露が発生しやすくなります。結露やカビが発生すると木材の劣化が進むため、軒裏や棟に換気部材を設置して空気の流れを促すことが大切です。

丁寧な施工が必要

天井断熱の施工は比較的簡単ではありますが、断熱材と断熱材の間にわずかな隙間があるだけで、断熱効果が低下するため、丁寧な施工は不可欠です。

家には天井を支える材料(桁・梁や吊り木など)が存在するため、雑な施工では、断熱性能が低くなるだけでなく、家の劣化や耐久性の喪失につながりかねません。

高性能な断熱材を使用しても、適切な施工が行われなければ効果は薄れてしまいます。均一な厚みを保ち隙間を作らないように気密性を高めることが重要です。

隙間があれば空気はどこにでも流れ込み、温度差が生じて結露が発生する可能性があります。
特に耐水性の低い断熱材を使用する場合は、必ず防湿シートを組み合わせて施工することが大切です。

住宅業者を選定する際には、施工実績や施工内容などを確認したうえで、技術力や信頼性の高い業者に依頼しましょう。

まとめ

天井断熱は快適な居住環境をつくるうえで、おすすめの断熱方法です。屋根断熱と比較すると、施工コストや冷暖房のランニングコストを抑えられるため、家計に優しい家作りが実現します。

一般的には天井断熱が採用されますが、屋根断熱は屋根裏を部屋や収納スペースなどとして活用したい場合に有効です。

イシカワでは、施工コストと光熱費が抑えられる天井断熱を標準仕様としています。
さらに、断熱性を高めて光熱費を抑えられるように、屋根部分にはアルミ遮熱材「R-FOIL」も使用している点が強みです。

イシカワの断熱の仕組みの詳細は展示場でご説明いたしますので、ご興味のある方はお近くのモデルハウスにぜひご来場ください。

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この記事の担当:
イシカワ家づくり編集部

断熱や耐震など、最新の家づくりに役立つ知識をお届けします。みなさまの家づくりの参考にぜひご覧ください。