家づくりの知識

2022.11.29

ハウスメーカーの高気密・高断熱を比較する方法は?メリット・デメリットを解説!

高気密・高断熱の仕組み

耐震性や間取り、デザイン面など、家づくりでこだわる部分は人によって多種多様です。2023年現在では、高気密・高断熱の性能の高い住宅が注目されています。
しかし、「断熱性の高い住宅」とハウスメーカーから説明をされても、実際にどのような断熱性の工夫がされているのかわからない人も多いのではないでしょうか。

判断基準や軸が定まらないままマイホームづくりを進めてしまうと、「こんなはずではなかった……」と、後悔しかねません。家は一生に一度の大きな買い物だからこそ、職人の技術力やハウスメーカーのサービス内容を比較検討することが不可欠です。

そこで、本記事では住宅の気密性や断熱性と、ハウスメーカーの選び方について解説します。

断熱性や気密性、ZEH住宅など、快適に過ごせる住宅性能について解説するので、住宅選びの参考にしてください。

この記事の結論

今後日本の省エネ対策が進む中で、高気密・高断熱・ZEHなどは今から取り組んでおくべきです。省エネ基準は当たり前であり、目指すべきはZEH基準以上です。
また、気密測定を実際に行っているかがハウスメーカー比較のポイントです。

断熱性能等級とは(2022年10月新基準)

断熱性能等級とは

断熱性が求められる理由は、家自体の寿命を延ばしたり、人の暮らしやすい快適な環境を造るためにも重要です。また、省エネ対策としても断熱性が求められます。

しかし、断熱性と一重に言っても、断熱性には等級があるのです。
断熱性の等級とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)で規定されている「省エネ性能」を表す基準を指します。

等級1~等級7まで基準は、以下のとおり。

2022年10月までは等級5が最高ランクでしたが、2022年10月1日から等級6と7が施行されました。

2022年現在では等級1~等級7に分かれていますが、2025年4月以降はすべての新築住宅に等級4が義務付けられるため、2025年4月以降は最低ランクが等級4になります。

等級3と等級4では、断熱材の厚みが2倍から4倍にする必要があるので、等級3よりも断熱性は高いです。

しかし、等級4でも十分な断熱性があるとは言えません。あくまで「最低でも等級4が有れば良い」程度と考えてください。

さらに、等級5~等級7の違いについても見ておきましょう。等級5~7は、求められる性能が違うため、断熱材の仕様や厚さが異なります。

また、等級6、等級7と同等の「HEAT20 G2」「HEAT20 G3」の性能についても見ていきましょう。

以下の表では、「HEAT20 G1」の性能も合わせて紹介します。
北海道や沖縄など、地域によって異なりますが、関東をメインとした場合は、以下の性能になります。

※地域区分5~6地域の場合

断熱性を高めるメリットは?

冬も暖かい家

断熱性を高めるメリットは、大きく2つです。

・室温が保たれた快適な部屋で暮らせる
・光熱費を節約できる


簡潔にまとめて言うならば冷暖房をフルに活用しなくても、ある程度の室温が保たれている」状態です。

温度の変化は健康面でも悪影響を及ぼすので、一定の温度で過ごせるのは、ご家族にとって大きなメリットになるでしょう。

さらに、断熱性の高い家は、夏場は冷たい空気が逃げづらくて涼しく、冬場は暖かい空気が逃げにくいため、冷暖房の使用を最小限で済ませられます。その結果、光熱費の節約につながるのです。

断熱の仕組み

室内をサーモカメラで撮影する様子

では、なぜこれらのメリットが生じるのか「断熱」の仕組みについても解説していきます。

「断熱」というのは、熱の移動を断つ(減らす)ことです。

人が熱さや寒さを感じるのは「放射(輻射)」が関係しています。身の回りにある全ての物体、たとえば家具や壁などは、すべて温度に応じて熱を発しているのです。

それぞれの表面温度が高ければ高いほど、放射熱の量も大きくなります。つまり、高断熱の住宅は、外気の影響を受けにくいのです。

たとえば冬場、外気の温度が下がれば、家の壁や家具の表面温度も下がり、寒いと感じます。
高断熱住宅は、断熱材によって外気の温度に影響されにくく、また、家の温度を外に逃がさないような造りになっているため、一定の温度を保てるのです。

断熱素材の種類

断熱材の種類

このような造りにするための断熱素材には、大きく分けると以下の2種類があります。

・繊維系断熱材…グラスウールなど
・発泡プラスチック系断熱材…ウレタンフォームやポリスチレンフォームなど


繊維系断熱材は、繊維状の素材が重なり合い、間に空気を含むことで効果を発揮します。
無繊維系断熱材と木質繊維系断熱材に分けられ、グラスウールやセルロースファイバーなどが代表的な素材です。

プラスチック系断熱材は、名前のとおりプラスチック素材を発泡させて作られており、素材の中に小さな気泡を閉じ込めて断熱効果を発揮します。
ウレタンフォームやポリスチレンフォームの他、フェノール樹脂なども発泡プラスチック系断熱材の一つです。

断熱性と気密性

断熱材グラスウールの施工の様子

住宅の断熱性と同時に知っておきたいのが「気密性」です。

「高断熱住宅」などはよく知られる言葉になっていますが「気密性」については、知らない人も多いのではないでしょうか。
しかし、過ごしやすい環境を作る住宅には、高断熱だけではなく、高気密も重要です。詳しく見ていきましょう。

断熱性と気密性の違い

高断熱と高気密は、以下の違いがあります。

・高断熱住宅…断熱材を用いたり断熱性の高い窓を採用して、断熱性能を高めた住宅
・高気密住宅…精度の高い建築部材や防湿シート・気密テープなどを使って隙間を作らないようにした住宅


簡単に言うならば、断熱は外気温の影響を遮断、気密は外気の侵入を防ぐといった、目的の違いがあります。外気の影響を大幅におさえるのであれば、高気密と高断熱はセットとして、どちらも考えておくべきです。

建築材料による気密性・断熱性の違い

建築材料によって、気密性・断熱性に差があります。以下では木造住宅と鉄骨住宅での気密性・断熱性の特徴をみていきましょう。

木造住宅の気密性・断熱性

まずは木造住宅の気密性・断熱性についてです。木造の建築物は強度や耐久性の高さから、古くより北欧の建屋に用いられてきました。例えば、北欧の輸入住宅を専門とするスウェーデンハウスでは、木造の高気密・高断熱の住まいを得意とします。

一方で、高気密・高断熱住宅は木が腐りやすいと言われています。これは、高断熱・高気密住宅が断熱材によって木材を覆うため、木材が呼吸できなくなることが原因です。特に床下は湿度が高く、通風性も悪いため、木材にとってよい環境とはいえません。

木造で高気密・高断熱の家づくりをする際には、床下湿度や木材含水率の比率に注意が必要です。また24時間換気システムや全館空調などを活用すると、湿気や通気性の対策ができます。

イシカワでは特許出願中の独自の全館空調システムと24時間換気システムを併用し、木材にも人にも一年中優しい空気環境の家づくりをしています。

鉄骨造住宅の気密性・断熱性

続いて、鉄骨造住宅についてです。鉄骨造は基本的に、木造住宅と比較すると、気密性・断熱性が劣ります。鉄は木よりも靭性(材料の粘り強さ)に優れており、地震の揺れのエネルギーをやわらかく逃すことが可能です。しかし歪んで揺れの力を逃がす分、揺れた時に隙間ができる、気密性を高めるために壁に入れたパネルが割れるなどの恐れがあります。

また、鉄骨住宅は基本的に、鉄筋コンクリート造と比較すると、断熱性能を上げるのが難しい傾向にあります。鉄は熱伝導率が高いため、外気温の影響を受けやすいためです。外気が暑いと鉄もすぐ熱くなり、寒いと冷たくなるため、柱から奪われる熱の影響は大きくなります。

熱損失を防ぐには、鉄骨から壁紙のある内装壁までの間に、厚みのある断熱材を詰めて、熱伝導率の高い鉄を断熱材でガードします。しかし、柱の外側に断熱材を置く外断熱の場合、家の外側から見た時に比べて部屋の空間が狭くなるため、できるだけ広く間取りを取りたい人は注意が必要です。

施工者の技量や品質によっても差があるため、比較検討する際にはどのような対策をとっているかハウスメーカーに質問してみましょう。

高気密・高断熱住宅のメリットは?

高気密・高断熱のメリットとして、以下の3つがあります。

・ヒートショックの危険性がない
・断熱性能の低下を防ぎ、省エネになる
・効率的に換気でき、内部結露を防げる


詳しくご説明いたします。

ヒートショックの危険性がない

ヒートショックの説明

1つ目のメリットは「ヒートショックの危険性がない」ことです。

ヒートショック現象とは、住環境における急激な温度変化による身体的不調。特に冬の寒い時期に浴室と暖房室の温度差が10度以上になると、血圧が激しく動いたり、脈拍が変動したりして、ヒートショックが生じやすくなります。

家の中で最も多い死亡理由が「浴室での急死」です。年間1万4千人が浴室でのヒートショックにより亡くなっており、この数字は交通事故での死者数のなんと2倍。脳溢血や貧血が原因となり、浴槽内での溺死に繋がるケースは少なくないのです。

しかし高気密・高断熱住宅であれば、家の隙間がなくなり、部屋による温度差が少なくなるため、ヒートショックのリスクを回避できます

大切な人の健康を守るためにも、高気密・高断熱の確かなハウスメーカーに依頼して、家づくりを進めることが大事です。

断熱性能の低下を防ぎ、省エネになる

省エネのポイント

2つ目のメリットは「断熱性の低下を防ぎ、省エネになる」

高気密・高断熱住宅は、外からの熱が伝わりにくく密閉されています。
そのため、冷房の効きが良くなるのです。
効率よく室内を暖かくしたり冷やしたりできるので、電気代を抑えられます

また、断熱は外気温の影響を遮断、気密は外気の侵入を防ぐことも可能です。

気密と断熱、いずれかでも部屋の温度をある程度一定に保つことはできますが、一つでも欠けると、温度を完全には一定に保てません。

服装に例えるのであれば、断熱はセーター、気密は革製品だと考えてください。
セーターによって外気温の影響は受けにくくなりますが、気密性がないため、風の影響を受けてしまいます。
セーターの上から革ジャンなどを着れば、気密性が高くなり、本来の断熱性能を発揮できるようになるのです。

効率的に換気でき、内部結露を防げる

3つ目のメリットは、「効率的に換気でき、内部結露を防げる」点です。

人が家のなかで生活していると、水蒸気や二酸化炭素など、様々な汚染物質が発生します。
これらの汚染物質を速やかに排出するためには、換気をしなければいけません。
そのために家には換気扇がついているのですが、気密性の低い住宅ではうまく換気できないのです。

その結果、家の一部によどんだ空気や臭いが溜まってしまう現象が発生してしまいます。
常に窓を開けて換気できるような地域環境であればそれほど気にする必要はありませんが、気温やセキュリティの観点から窓を開けっ放しにすることが難しい場合は、気密性を高めた換気がおすすめです。

室内換気が不十分だと、内部結露が発生する原因になります。内部結露とは、天井裏や壁裏などの見えない場所に結露が発生する現象です。
気密性の低い住宅では、室外の隙間から湿気が室内に入り、室内の水回りに発生する水蒸気が、外へと出ていきます。
その湿気の通り道が結露すると、柱を腐らせたり、ダニやカビを繁殖させたりしてしまいます。

家の腐敗を防ぐためにも、高断熱だけではなく高気密が重要です。ハウスメーカーごとに高断熱・高気密性は異なるため、どのような性能をもっているか質問してみてください。

以上が高気密・高断熱住宅のメリットになりますが、当然デメリットもあります。

高気密・高断熱住宅のデメリットは?

高気密・高断熱住宅のデメリットは、以下の2つです。


・建設コストが高い
・暖房器具に制限があり、乾燥しやすい


詳しく見ていきましょう。

建設コストが高い

建築コストを計算

高気密・高断熱住宅は、機能性は高いものの、当然建設にコストがかかります。
ハウスメーカーによって異なりますが、断熱材や気密テープ、遮熱性の高い窓ガラスなどの設備を導入すると、坪単価約3万円~5万円程の施工費用がかかると考えておきましょう。

ただし、光熱費の節約になるため、長い目でみれば、メリットの方が大きいです。

暖房器具に制限があり、乾燥しやすい

高気密・高断熱住宅では使用できない暖房器具

また、高気密・高断熱住宅は、暖房器具の制限があります。

とくに、石油ストーブには注意しなければいけません。石油ストーブは、水分とともに二酸化炭素などの燃焼ガスを発生させるため、高気密・高断熱住宅では、ガスが充満してしまい、危険です。

また、外気が入りにくい点から、ストーブの燃焼に必要な酸素が不足し、不完全燃焼を起こしてしまう可能性があります。不完全燃焼を起こしてしまうと、一酸化炭素中毒を引き起こす可能性があるので、注意してください。

さらに、高気密・高断熱住宅は、外気からの湿気が入りにくいため、部屋の空気が乾燥します。
乾燥による健康への影響も懸念されるので、加湿器を置くなどの工夫が必要です。

気密測定について

高気密住宅を考える上で重要な「気密測定」についても知っておきましょう。

気密測定とは、住宅の隙間を、機械によって測定する方法です。機密性能の単位は、日本では「C値」と呼び「㎠/㎡」単位で表されます。
先述したように、住宅の気密性が悪いと、断熱効果を最大限に発揮できなかったり換気のバランスが悪くなったりするため、気密測定による調査はとても重要です。
また、壁内結露の原因にもなるので、住宅を長く使うためにも、気密測定をしっかり行ってもらいましょう。

気密測定の数値別のイメージは、以下のようになります。

気密数値と、数値による住宅のイメージ対比表

このような気密測定は、JISで定められた測定方法があり、測定する技術者は「気密測定士」という資格を保持していなければいけません。

気密測定の種類

また、気密測定には、以下の2種類があります。

・中間気密測定
・完成気密測定


それぞれは、名前のとおり「中間気密測定」は建築の途中で行われる気密測定、「完成気密測定」は建設完了時に行われる気密測定です。

気密測定を2回行う理由は、できる限り気密処理を万全に行うためです。

中間気密測定は、多くの場合、天井・壁・床の断熱工事が終わった後、石膏ボードやクロス貼りなどの内装施工を行う前に測定します。これは、内装施工前であれば、気密を高めるための手直しができるからです。

たとえば、C値1.0㎠/㎡を目指す住宅で、中間気密測定が2.0㎠/㎡の場合、1.0㎠/㎡に近づけるように手直しをしなければいけません。もしこれが、物件が完成した後に発覚してしまうと、内装施工した場所の手直しが難しくなってしまいます。

つまり、中間気密測定は気密性を高めるための確認、完成気密測定は完成後の気密性が保持できているかの確認と考えて良いです。

気密測定の方法

では実際に、どのように気密測定を行うのか、具体的な方法についても見ていきましょう。
基本的な流れは、以下のとおりです。

1. 気密測定器の搬入
2. 換気口の目張り
3. 気密測定器の設置
4. 風力確認
5. 施錠確認
6. 気密測定の開始


それぞれの工程について説明します。

気密測定器の搬入では、搬入後に現場の中で測定ができる場所を探します。測定の場所は、小さな窓でも大きな窓でも問題ありません。

ただし、大きな窓は気密性が悪く、間から空気が漏れてしまうため、小さな窓での気密測定が向いています。

換気口の目張りでは、住宅の換気口をすべて養生テープ等で目張りします。換気口は、計画換気に必要な穴であるため、気密測定では必要な箇所をすべて塞がなければいけません。
換気口の目張りが完了したら、窓部分などの目張りをして、一切の外気が入ってこないようにします。

次に、気圧測定器の設置です。
各観測点のセンサやホースを本体に接続し、外の圧力差をはかるためのチューブを出す穴を開けます。穴を開けた部分にもしっかり養生テープで処理するので、外気が入ってくる心配はありません。

気密測定器の設置を終えた後は、外の風力を確認します。
なぜなら、基本的に気密測定を行う際には、風速3m/s以下でなければいけないという規定があるからです。

風力計を1分はかり、平均値が3m/s以下であれば測定可能となります。
さらに、家本来の気密性能を発揮するために、すべての窓を施錠します。
どこか一つでも施錠忘れがあると、正しい数値が出ません。

ここまでの準備ができて、やっと測定開始となります。大変な作業ですが、きちんと測定を行い、気密性能を確認することが大切です。

UA値・Q値・C値とは?

UA値・Q値・C値とは?

高気密・高断熱の性能はハウスメーカーごとによって異なります。どのハウスメーカーが高気密・高断熱の性能に優れているかは、「UA値」「Q値」「C値」から判断可能です。これらの値の数値を理解できれば、「思ったより高気密・高断熱の効果が感じられない」といった失敗を回避できます。

以下では、基準となる数値を「UA値・Q値」「C値」の2つに大別し、それぞれの値の特徴をみていきましょう

UA値・Q値…断熱性能
C値…気密性能


それぞれを具体的に解説します。

UA値

UA値とは「外皮平均熱貫流率」で、住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値です。

※補足
外皮とは、建物の外周部分の構造体。外壁・屋根・外気に接する床・窓などを指します。

熱量は住宅の内部から外皮を通して逃げる性質があります。
この熱量を外皮全体で平均し「熱量がどのくらい外部に逃げやすいか」を表したものが、UA値です。

UA値の推奨値は、ZEH基準では以下のように定められています。

UA値の推奨値を、ZEH基準で定めた表

UA値は「総熱損失量÷外皮表面積」で求められます。
ただし、熱損失量は、使用する部材の熱伝導率、床断熱か基礎断熱か、天井断熱か屋根断熱か等によって異なります。
また、外皮熱損失量に換気熱損失は含みません。

※補足
換気熱損失とは、建物内の空気が持っている熱量を計算した上で、換気によって熱が逃げているという考え方。換気熱損失は、「空気1m3の熱量(容積比熱)0.35Wh/m3K×建物内の気積(m3)×換気回数(回/h)で求められます。

Q値

Q値は、UA値とほぼ同様で「熱の逃げやすさ」を表す数値です。ただし、Q値とUA値では、対象とする面積が異なります。
UA値では、床や壁、天井などの外皮面積を計算するのに対して、Q値では建物の延べ面積を元に計算します。

また、UA値では換気熱損失を含みませんが、Q値では換気熱損失も含まれます。しかし、公正な断熱性能を求めるのであれば、UA値をはかった方が良いでしょう。

なぜなら、Q値は、建物の延べ床面積が大きいほど小さくなってしまい、住宅性能が高いと評価されてしまうからです。

UA値は、開口部を全て含んでいるので、UA値より公正な評価が期待できます。以前は断熱性能を表すのにQ値が使われていましたが、2013年改正の省エネ基準からは、UA値ではかるハウスメーカーが多くなりました。

Q値の推奨数値は基準として記載されていませんが、多くのハウスメーカーや工務店では、2.7W/㎡・K~1.0W/㎡・Kの範囲内となっています。

Q値の算出方法は「総熱損失量÷床面積」
先述したように、Q値は延べ面積を元に計算するため、計算式に「床面積」が入ります。
UA値と比べると公正性はありませんが、Q値は換気熱損失量も考慮するため、冷暖房を含めた全体の断熱性能を知りたいときに有効的です。

C値

C値については先述していますが、改めて推奨数値や算出方法について解説します。

C値は、家の面積に対しての隙間の存在を表した数値です。C値の推奨数値は、平成11年までは努力目標として5.0とされていました。
しかし、省エネ基準の改正により、現在の基準値は設定されていません。
C値の設定値については、ハウスメーカーによって異なるので、どの程度に設定しているのか事前に確認しておくと良いでしょう。

1.0㎠/㎡以下の設定値であれば、高気密住宅と言えます。
また、C値の算出方法は「住宅全体の隙間の合計面積÷延べ床面積」。たとえば、床面積が100㎡の住宅で、C値が1.0㎠/㎡であれば、住宅全体の隙間が100㎠あるという計算になります。

ただし、住宅全体の隙間を確認するのは困難であるため、先述したように気密測定器を使った方法が一般的です。

3つの値について解説しましたが、2022年現在においてQ値は使われないケースが多いので、基本的にはUA値とC値を確認しておけば問題ないと言えるでしょう。

ZEH(ゼッチ)住宅の基準とは?

ZEH住宅の基準とは

高断熱住宅として「ZEH(ゼッチ)」についてご存じでしょうか。

ZEHとは(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)として、年間で使うエネルギーが創るエネルギーによって差し引きゼロ以下になる住宅を指し、資源エネルギー庁では、以下のように定められています。

ZEHの定義(戸建住宅)

ZEHとは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」とする。
(引用元:ZEHの定義(改定版)<戸建住宅>|資源エネルギー庁|平成31年2月

ZEHの種類

さらに、ZEHにはNeary ZEHとZEH Orientedがあります。

Neary ZEH…外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた住宅
ZEH Oriented…外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた住宅

それぞれの基準は、以下のとおりです。

ZEHの種類とUA値、エネルギー消費量の対比表

(参考元:ZEHの定義(改定版)<戸建住宅>|資源エネルギー庁|平成31年2月

ZEH普及の背景と目標

省エネルギーとZEHイメージ

このようなZEH普及が行われている背景には、日本国内のエネルギー問題が関係しています。

とくに大きなきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災。積水ハウスや三井ホーム、ダイワハウス、セキスイハイム 、ミサワホーム、一条工務店など大手ハウスメーカーでも、ZEHの普及が検討され始めました。また、住友林業やトヨタホーム、アイフルホームなどのハウスメーカーでも同じく、省エネ住宅が注目を集めました。ただ、元々日本では、暮らしを支えるエネルギーのほとんどを輸入に頼っている状態であったため、災害の度に国内のエネルギー生産が間に合わなくなり、エネルギー価格が不安定になっていました。

そのため、ZEHを普及させて、エネルギー需給構造を改善しようとしているのです。そこで政府は、ZEHの普及において、以下のような目標を設定しています。

住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す
2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上をZEHにすることを目指す
2030 年までに新築住宅・建築物について平均で ZEH・ZEB 相当となることを目指す


その他、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー課の「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案」資料では、2030年に向けた住宅・建築物の対応として、以下のように報告されています。

・建築物省エネ法を改正し、省エネルギー基準適合義務の対象外である住宅及び小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化する。

・2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネルギー性能の確保を目指し、誘導基準・住宅トップランナー基準を引上げるとともに、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。

・ZEHやZEBの実証や更なる普及拡大に向けた支援等を講じていく。さらに、既存建築物・住宅の改修・建替の支援や、省エネルギー性能に優れリフォームに適用しやすい建材・工法等の開発・普及、新築住宅の販売又は賃貸時における省エネルギー性能表示の義務化を目指す。

・建材についても、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の省エネルギー性能の確保を目指し、建材トップランナー制度における基準の強化等の検討を進める。加えて、省エネルギー基準の引上げ等を実現するため、建材・設備の性能向上と普及、コスト低減を図る。

(引用元:ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案|国土交通省|令和4年3月

太陽光発電の住宅・建築物の導入拡大についても、以下のような取り組みが検討されています。

・2050年において設置が合理的な住宅・建築物には太陽光発電設備が設置されていることが一般的となることを目指し、これに至る2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す。

・その実現に向け、例えば、新築の庁舎その他政府の新設する建築物について、新築における太陽光発電設備を最大限設置することを徹底するとともに、既存ストックや公有地等において可能な限りの太陽光発電設備の設置を推進するなど、国も率先して取り組む。

・加えて、民間部門においてもZEH・ZEBの普及拡大や既存ストック対策の充実等を進めるべく、あらゆる支援措置を検討していく。

(引用元:ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案|国土交通省|令和4年3月

さらに2022年度には、「ネット・ゼロ・エネルギーハウスの推進に向けた取り組み」として、経済産業省・国土交通省・環境省による3省連携の取り組みが発表されました。

ZEHに対する支援は、以下のとおりです。

経済産業省…将来のさらなる普及に向けて供給を促進すべきZEH(次世代ZEH+、集合住宅(超高層))
環境省…引き続き供給を促進すべき、ZEH、ZEH+(戸建て住宅、集合住宅(高中低層))
国土交通省…中小工務店が連携して建築するZEH(ZEHの施工経験が少ない事業者に対する優遇)


また、2017年4月からは、ZEHの基準を満たした住宅に対して「ZEHマーク」の表示が可能となりました。

「BELS」と呼ばれる建築物の省エネルギー性能を表示する第三者認証制度により、ZEHの条件を満たした住宅は「ZEHマーク」を表示できます。

ZEH住宅の補助金

ZEH住宅の補助金

さらに、ZEH住宅は、補助金をもらうこともできます。

ZEH補助金を獲得するための主な要件は、以下の3つです。

建築する会社が、ZEHビルダー / ZEHプランナーである
断熱性能 / 一次エネルギー消費量 / 創エネ機器 の3点を主とするZEHとしての建物条件を満たす設計がされている
公募期間、完了期間などのスケジュールが合致すること


2022年度の補助金額と条件については、以下のとおりです。

ZEH補助金の種類と条件などの一覧表

これらの補助金を使うと、ローコストで省エネかつ高性能な家づくりが実現できます。できるだけ費用を抑えて理想を叶えるためにも、ぜひ公的制度の活用を検討してください。

公募期間や条件については、年度によって異なる可能性があるので、随時チェックしておきましょう。

従来の省エネ基準とZEH基準の違い

省エネについては、各ハウスメーカーでこれまでも全く考えられていなかったわけではありません。ZEHが誕生する前から「省エネ基準」として、考えられていました。

省エネ基準は、国土交通省が管轄する、国によって定められた基準です。元々日本には、1979年制定の省エネ法があり、1980年には「旧省エネルギー基準」として生まれ変わります。

その後、省エネ法の改定に連動し、平成11年に「次世代省エネ基準」、平成25年に「改正省エネ基準」、平成28年に「建築物省エネ法」として改定を重ねてきました。

ここで言う「省エネ基準」は、最後に改定された「建築物省エネ法」になります。
ただし、ZEHと省エネ基準では、大きく異なるものです。

大きな違いは、基準の厳しさ。

従来の省エネ基準は「建築物省エネ法」に準じた住宅でしたが、「建築物省エネ法」では、建設する地域や日照条件等によって省エネに関する基準が異なります。
そのため、場合によっては基準値の低い住宅が、省エネ住宅として施行されることがありました。

ZEHについては、ただ省エネをするだけではなく、消費エネルギーよりも住宅で作ったエネルギーの方が多いもしくはプラスマイナスがゼロにならなければいけません。

簡単にそれぞれを分けると、

「省エネ基準の住宅は、消費エネルギーを減らす」
「ZEH基準の住宅は、消費エネルギーを減らし、エネルギーを創る」


という違いになるのです。

また、UA値に関しても異なり、ZEH基準と省エネ基準では、以下のような違いがあります。

ZEH基準と省エネ基準の比較表

地域区分5以上になると、エリアによって0.27もの差があります。
さらに、HEAT20などと断熱基準を比べると、以下のようになります。

省エネ基準の比較表

省エネ基準と比べると、UA値も厳しく、ZEH+や次世代ZEH+に関しては、その他要件も細かく設定されています。
単純に省エネ性能だけで比べるなら、以下のような順番になるでしょう。


1. HEAT20
2. ZEH
3. 省エネ基準


上記のように、省エネ基準では省エネ性能が低いです。
基準の厳しさや性能が、ZEHと省エネ基準との大きな違いと言えます。

このように国が推進するZEHですが、実は認知度が高い大手ハウスメーカーでも、実績はそれほど多くありません。省エネ住宅をご希望の場合は、ご自分の家づくりを進める際に、ハウスメーカーごとが公表・掲載するZEHに関連する独自の取り組みや評判、実例にも着目してみましょう。

【高気密・高断熱】の住宅を建てるときのポイントまとめ

高気密・高断熱の選び方

これからの住宅は、高気密・高断熱住宅の性能がより高いレベルが一般化していきます。
今後日本の省エネ対策が進む中で、高気密・高断熱・ZEHなどは必ず取り組んでおくべきです。

ZEH基準に満たない省エネ基準もありますが、省エネ基準では快適な住居環境とは言えません。ハウスメーカーの断熱性能を比較する際は、以下のことに注目してください。

・省エネ基準は当たり前であり、目指すべきはZEH基準以上です。ZEH基準を目指した住宅であれば、高気密・高断熱の暮らしやすい環境になるでしょう。

・家を建てる際には、ハウスメーカーが気密測定を行うか確認しましょう。気密測定は費用のかかるものですが、測定を行って、きちんと気密性能が保たれているか確認することが大切です。いざ暮らしてみて気密性の低い家では、ストレスを感じてしまいます。

もし、それぞれの基準などに対して不安があったり疑問があったりする場合は、ぜひイシカワにご相談ください。

イシカワの家づくりでは、標準機能でZEH基準以上、すべての家で気密測定を行ってきた実績があります

ご要望に合った、住み心地の良い家を豊富なオプションや見積もりと一緒にご提案可能です。今回ご紹介した基準や測定値などを、ご自身で一つひとつを調べる必要はありません。ハウスメーカーの担当者に納得いくまでご質問いただきながら、本当に満足できる家づくりを目指せます。
ご家族で安心して、健康に過ごすためにも、ぜひ今回の記事を参考に、暮らしやすい家づくりに役立ててください。


イシカワの家の「高気密・高断熱」の性能について>

この記事の担当:
イシカワ家づくり編集部

断熱や耐震など、最新の家づくりに役立つ知識をお届けします。みなさまの家づくりの参考にぜひご覧ください。